● 伝統的な技法による写生
花が好き、鳥も好き。自然の中にいることが好き。絵を描くことも大好き。
大正・昭和・平成と大きく移り変わってきた時代の中で、一人の画家が見つめてきた日本の自然。
伝統的な技法に基づいて、現代の感性で制作活動を続けてきた新山晃司。
平成16年3月25日、90年にわたる生涯を閉じました。
そして、膨大な量の写生・スケッチが遺されました。
その「写生」は、伝統的な技法に基づき、現代的な感性で日々積み重ねられてきたものでした。
● 線の重要性
伝統的な写生における「線」は、単に対象物の輪郭を示す記号ではありません。
対象物を総合的象徴的に捉えるために凝縮されたものといえます。
一瞬一瞬における光の動き、空気、湿度、時間、生命感、感動、作者の心情などを繊細に含んでいます。
線の中にどれだけの要素・情報を含ませられるか、「生きた線」であるかどうかが重要になります。
「写生」とは、対象の輪郭を「生きた線」に置き換えて紙に定着させていくものという事になるでしょう。
● 慈しみのまなざし
晃司のこれらの写生には、身近にある自然に向けられた優しいまなざし・慈しみが現れています。
晃司にとって、ともに生きている喜び、さらには儚さへの思い・無常観は作品づくりの主要な動機となっていました。
その自然への思いは、日常的に積み重ねられていた写生という表現においてもより自然な形でにじみ出ています。
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